預貯金の払戻し・名義変更Q&A
預貯金の払戻し・名義変更について困っていませんか?
Q1.相続がおきると預貯金の払戻しができなくなるのですか?
A1.はい。金融機関は口座名義人の死亡の事実を知ると、口座を凍結するので、払戻しができなくなります。よって、相続が発生した後は、原則として法定相続人全員の合意が得られない限り預貯金をおろすことができません。
Q2.預貯金がいくらあるのかわからないのですが・・・
A2.相続人には相続財産がプラスなのかマイナスなのか調査する権限が認められています。これは、相続人はプラスの財産(預貯金等)だけでなく、マイナスの財産(借金等)も引き継ぐので、仮にマイナスの財産のほうが多ければ、財産を承継しない相続放棄という手続を検討しなければならないためです。よって、相続人は金融機関に対して預貯金の残高照会などをすることにより、預貯金を把握することができます。
Q3.遺産分割協議前でも預貯金の払戻しに応じてくれるのですか?
A3.原則として、遺産分割協議前でも法定相続人全員の合意があれば、預貯金の払戻しができます。ただし、念のため金融機関に確認されることをおすすめします。
Q4.遺産分割協議後の預貯金手続はどうなりますか?
A4.相続人全員で作成されたことがわかる遺産分割協議書(全員の実印及び印鑑証明書付)があれば、預貯金の承継者として指定された方から払戻すことができます。また、遺産分割協議の内容どおりに預金者の名義変更をすることも可能です。
Q5.相続人の1人が預貯金を勝手に引出して使っていたかもしれません。調査する方法はありますか?
A5.金融機関に対して取引経過の開示を求めて下さい。以前は、相続人の1人からの取引経過の開示については、金融機関は消極的でした。しかし、平成21年の最高裁判決により、「金融機関に取引経過開示義務あり」とされたことから、現在では単独の開示請求に対しても応じる取扱いとなっています。
Q6.死亡前に解約した預貯金口座の取引経過の開示を求めることはできますか?
A6.すでに解約されている口座であり相続の対象とはならないため、断られる可能性があります。金融機関が預貯金口座解約後も永遠に解約前の取引経過を開示する義務を負うことは金融機関にとってあまりにも事務負担が大きいとの理由です。一般論として、過去の預貯金契約について、預貯金契約締結中と同じく取引経過開示義務を金融機関が負い続けることはないと考えられています。
Q7.預貯金通帳が見当たらないのですが、手続はできるのでしょうか?
A7.できます。通帳は証拠証券といわれており、手形や小切手等の有価証券とは違い、通帳自体に価値があるわけではなく、通帳を持っている人が権利者と推定されるわけではありません。よって、相続人は通帳がなくても、戸籍や本人確認書類により、預貯金の権利者であることを証明でき、手続が可能となります。
Q8.遺産分割協議前に相続人の1から自分だけの払戻請求をすることはできるの?
A8.金融機関実務では、遺産分割協議前であれば、相続人全員の合意が得られなければ預貯金の払戻しには応じない取扱いとしています。これには、万一遺産分割協議により金融機関の取扱いと異なる配分が行われた場合に、クレーム等の事実上のトラブルに巻き込まれることを防ぐ狙いがあります。ただし、最近では柔軟な対応の金融機関も増えてきたため、念のため金融機関に確認されることをおすすめします。
Q9.公共料金の自動引落はどうなるのですか?
A9.金融機関は亡くなられた方との間で、公共料金に関する預貯金口座振替契約を締結しています。この契約は委任と解され、委任契約は委任者(預金者)の死亡により終了するので、法的には自動引落を止められる可能性もありますが、それでは日常生活に支障をきたすので、金融機関に対して自動引落継続のお願いをして、支障がでないようにすることも考えられます。
Q10.定期預金の相続手続はどうなりますか?
A10.定期預金の相続手続は、資金が外部に流出するか否かによって変わってきます。定期預金を満期解約するか、あるいは中途解約するには、必ず相続人全員の合意が必要となります。一方、満期の到来した定期預金の書き替え手続では、法的にも相続人の1人から手続が可能となります。
Q11.亡くなられた方の貸金庫はどうなりますか?
A11.貸金庫は、賃貸借契約であると解されています。お客様は金融機関に手数料を支払い、貴金属、有価証券、通帳、遺言書等の貴重品・重要書類を保管してもらいます。お客様は貸金庫契約にもとづき金庫を借りる権利(賃借権)を有しており、この賃借権も預金債権などと同様に相続の対象となります。ただし、相続人全員が連名で1つの貸金庫を借りるのではなく、相続人全員の合意により貸金庫契約を解約して、収納品を引き取るのが一般的です。
Q12.貸金庫は相続人の1人からでも開けることは可能ですか?
A12.原則として、相続人全員で金融機関に行き、貸金庫を開ける必要があります。これは、「持ち出した!持ち出していない!」などの後々のトラブルを防止するためですが、実際は遠方の相続人も多いため、他の相続人の合意が得られれば、代表相続人が1人で手続することも可能となっております。
Q13.貸金庫の名義変更はできるのですか?
A13.できます。亡くなられた方が有していた貸金庫契約にもとづく賃借権は相続の対象となるので、名義変更は可能です。ただし、相続人が1人しかいない場合などは名義変更を行っても特段問題は生じませんが、複数の相続人がいるときは、いったん解約して収納品を引き取るよう求められることが多いです。
Q14.遺言執行者は貸金庫を開けることができるのですか?
A14.できます。遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有していますから、遺言執行者1人で貸金庫を開けることは可能です。執行の対象となる財産の目録を作り、相続人・受遺者に交付することは、遺言執行者の重要な仕事だからです。ただし、この場合も事実上のトラブルを避ける観点から、相続人にも立ち会ってもらうのが望ましいと思われます。
Q15.相続人全員の協力が得られない場合は、貸金庫を開けられないのですか?
A15.金融機関にもよりますが、公証人の立ち会いをもって、開扉を認めてくれる金融機関もあります。これも難しい場合は、最終手段として行職員立ち会いのもとに開扉する方法もあります。
公証人は、貸金庫の収納品点検の公正証書を作成するために、まず金融機関で指定日時に相続人1人と行職員の立ち会いのもと、貸金庫の収納品を点検・確認します。数日後に公証人役場で立会人全員が公正証書の内容を確認し、署名・押印して公正証書ができます。この公正証書を「事実実験公正証書」といい、収納品の内容だけでなく、「貸金庫に何も入っていなかった」という証書も作成できます。最終手段ですが、このような方法で貸金庫を開けることも可能です。