二重にある相続資格の一方だけを放棄したい
Q.祖父の相続につき、すでに両親が亡くなっているため、孫として相続することになりました。しかし、祖父と養子縁組をしているため、養子としても相続することになります。このケースで、孫としてのみ相続するには、どうすればよいのでしょうか?
A.複数の相続資格を有する場合には、どの資格に基づく相続を放棄するのか明確にして相続放棄の申述をします。
二重資格を有する場合の相続分
祖父と養子縁組し、実親が既に死亡している者は、祖父が死亡した場合に、養子と孫という二重の相続資格を持ちます。また、婿養子として妻の両親と養子縁組した者は、妻が死亡した場合に、配偶者と兄弟姉妹という二重の相続資格を持ちます。
このように、1人が二重の相続資格を有する場合、両方の相続分を併せ取得するか、一方のみを取得するかについて問題になります。先例は、前者のケースについては、両方の相続分を併せて取得するとしています(昭和26・9・18民甲1881)が、後者については、配偶者としての相続分のみしか取得しないとしています(昭23・8・9民甲2371)。
二重資格を有する相続人の相続放棄の効果
二重の資格を有する相続人は、各資格ごとに独立の承認・放棄の選択権を持つのか、それとも、1つの資格で相続放棄すれば他の資格に基づく相続権も失うのかについては、見解が分かれるところですが、判例では以下のとおりとなっております。
(1)同順位の場合
養子としての相続資格と孫としての相続資格のような同順位の相続資格を併せ持つ場合の放棄については、一応両方の資格について放棄したものとし、一方の資格でのみ放棄し、他方の資格を留保する旨を明示した場合に限り、一方の資格でのみ放棄したものとされます。
(2)異順位の場合
亡くなられた方の兄弟が養子となっている場合のように、異順位の資格を併せ持つ場合には、各別に判断されます。
この場合、先順位の相続資格に基づく放棄をしても、当然には後順位の資格に基づく相続権には影響を及ぼさず、後順位の資格で相続することができます。
もっとも、両資格に基づく相続を同時に放棄することも認められています。
したがって、同順位の相続資格を併せ持つ相続人が、一方の相続資格についてのみ放棄し、他方を留保したい場合には、その旨明示しなければなりません。また、異順位の相続資格を持つ者が、相続財産を一切承継したくなければ、両順位の相続資格で放棄することを明示しなければなりません。いずれにしても、二重の相続資格を持つ者は、どの資格に基づいて相続放棄するかを明確にして申述することによって、不測の事態を避けることが必要です。
過去の裁判例
・同一人が、先順位である被相続人の直系尊属であると同時に、後順位である戸主でもある場合について、先順位の直系尊属としての資格で相続放棄しても、後順位の戸主としての資格で相続できる(旧法における判例。大判昭15・9・18民集19・19・1624)
・同一人が、被相続人の妹であると同時に養子でもある場合について、各相続資格別に放棄することができ、かつ、同時に双方の資格で放棄することも可能である(京都地判昭34・6・16家月12・9・182)
日曜営業の岐阜サンデー法務事務所にご相談下さい
家族といえどもいきなり他人の借金を背負うことになるのはとても納得できるものではありません。しかし、相続放棄をすればそのような状況から免れることができます。
ただし、失敗が許されない1発勝負の手続になりますので注意が必要です。
当事務所では、丁寧なヒアリングと豊富な経験から相続放棄を勝ち取りにいきます。
3か月経過前の相続放棄 39800円(一律・完全成功報酬型・料金後払い制)
3か月経過後の相続放棄 59800円(一律・完全成功報酬型・料金後払い制)