相続人が相続放棄をしないまま死亡したとき(再転相続)                                

Q.祖父が多額の借金を残して死亡し、その後その相続を放棄する予定だった父が急逝してしまいました。父の遺産は相続したいのですが、祖父の借金は相続したくありません。どのようにすればよいのでしょうか?                           

A.亡くなられた祖父の相続について相続人の父が相続の承認・放棄をしないまま死亡した場合に、父の相続人である自分が、祖父の相続についてのみ放棄するには、祖父の相続を放棄することを明確にして、相続放棄の申述をしなければなりません。このようなケースを再転相続といいます。                        

再転相続における申述期間

亡くなられた方Aの相続について、Aの相続人Bが相続の承認も放棄もしないまま熟慮期間内に死亡し、相続人CがBの相続人となった場合を「再転相続」といい、相続を承認するか放棄するかの考える期間は、相続人Cが自己のために相続の開始があったことを知った時から起算します。これは、CがBの死亡により自己が相続人になったことを知った時であって、CがAの死亡を知っていたか否かは直接には関係ありません。

再転相続の場合の承認や放棄の仕方

A-B-Cと再転相続が生じた場合、Cは、亡くなられた方Aの相続について承認または放棄する地位をBから承継するので、亡くなられた方Aの相続と亡くなられた方Bの相続の2個の相続につき、承認・放棄の選択権を持つことになります。

この場合のCは、①亡くなられた方Aの相続、亡くなられた方Bの相続のいずれも承認する、②いずれも放棄する、③Aの相続については放棄するが、Bの相続については承認する、という3とおりの選択が可能です。しかし、Bの相続について放棄して、Aの相続については承認することはできません。なぜなら、Bの相続について放棄することにより、Bの有していた選択権も承継しなかったことになるからです。Bの相続について放棄すれば、当然Aの相続についても放棄したことになるので、この場合には、Aの相続については、何ら手続は必要ありません。

Cは、Aの相続について放棄した後も、熟慮期間内であれば、Bの相続について放棄することは可能で、既にしたAの相続放棄の効力は遡って無効にはなりません。

相続放棄後の代襲相続

上記と死亡の順序が異なり、Aの推定相続人であるBがAより先に死亡し、Bの相続人であるCがBの相続について相続放棄した後、Aが死亡し、CがBの代襲相続人となった場合は、再転相続ではなく、結果は異なります。

この場合には、Cが相続放棄した時点では、Aについての相続は発生しておらず、したがって、Cは、Aの相続についての選択権を行使したことにはなりませんので、改めてAの相続について放棄するか承認するか選択することができます。

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